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遺伝子検査ビジネスの市場規模は拡大しており、経済産業省が昨年度まとめた調査結果では、2007年は約9億円の市場規模だった。インターネットなどでも、ダイエット関係などで見かけることが多い。
多くは、ほおの粘膜の細胞などから、肥満などの可能性を調べるという検査で、費用は5000円~1万円程度。がんの遺伝子検査をするという名目で高額の料金を支払ったが、実際には効果がなく、トラブルになった例も報告されている。
生活習慣病の危険性が高いと判明すれば、医師の指導で食事や運動を改善
医学的検査は通常は、体に何らかの不調や症状があり病気が疑われる場合に、医療機関において行われる。医学的な研究や調査をもとにして開発された遺伝子検査が、医療の現場で実際に使われはじめている。
大阪大学医学部発のベンチャー企業である「サインポスト」は、肥満、酸化ストレス、コレステロールなど生活習慣病に関する62個の体質遺伝子を測定し、個人の体質にもとづき判定する「遺伝子検査サービス」を展開している。
体質の違いによって病気の進行も異なる。例えば、肥満や耐糖能異常(高血糖)を指摘された2人が、同じ食事や運動を続けたとしても、体質遺伝子の違いによって動脈硬化の進みやすさや心筋梗塞・脳梗塞の起こりやすさには違いがある。
ヒトの遺伝子は全体で約2万数千個あるとされる。糖尿病のなりやすさにはDNAの微妙な違い(一塩基多型、SNP)が関係している。SNPはDNAを構成する塩基の配列が1ヵ所だけ異なっていること。
「糖尿病オーダーメイド医療研究会」は2005年に、全国で約3900症例のデータ収集、動脈硬化や心筋梗塞に関連する遺伝子多型の検索を行った。このとき作成された6000例のデータベースをもとに、遺伝子検査サービスを行っている。
糖尿病の動脈硬化の研究から開始し、2006年より医療機関を通じて、遺伝子検査にもとづく糖尿病合併症の個別リスク判定を提示している。同年にメタボリックシンドロームにも適応できるよう改良し、現在は「運動&栄養プログラム」「動脈硬化リスク判定」などもある。
医療機関で採血した血液から遺伝子情報を測定。それを6000例のデータから導いた平均値と比較し、その人の体質の「危険度」を判定する。1~2週間すると、結果が医療機関に送られる。検査結果や問診をもとに医師が指導を行う。自由診療の扱いになるので料金は検査コースや医療機関によって異なるが、1回3万1500円から受けることが可能だ。
目指しているのは、1人ひとりの遺伝子情報に応じた治療法を選択できる「オーダーメイド医療」の実現。たとえば肥満の人であれば、自身の肥満に関わる遺伝子情報を知ったうえで減量や生活習慣病改善を行うことで、治療効果を高めることができるという。
同社では「遺伝子検査は確定診断ではなく、どんな体質をもっているかを調べるのが目的。特定の病気や症状へのリスクが高いと分かれば、医師が指導して食事や運動など生活習慣を効率的に改善できるようになる」と説明している。
今後は、薬の効きやすさや副作用の出やすさといった個人差を予測するための手段としても期待されている。
遺伝子検査を監視・監督する体制確立も必要
インターネットなどで手軽に利用できる「遺伝子検査」はもっと簡便なもので、ほおの内側の粘膜を採取して宅配便で送付すると検査結果を送り返してくるサービスなどがある。
日本人類遺伝学会は先月、市民を対象とした遺伝子検査の多くが科学的な根拠や有用性がはっきりしないとして、専門家による検証や法整備を急ぐべきだとする提言をまとめた。
提言では「医療機関を通さず提供される遺伝子検査」や「有用性が科学的に確認されていないにもかかわらず、あたかも疾患の発症、体質、能力、性格、進路適性などを確実に予測でき、有用であるかのように誤解を与えている場合も少なくない」と指摘している。
そのうえで同学会は下記の問題提起を公表した。
日本人類遺伝学会「一般市民を対象とした遺伝子検査に関する見解」(2010) 提言
1. 一般市民を対象とした遺伝子検査においては、その依頼から結果解釈までのプロセスに、学術団体等で遺伝医学あるいは当該疾患の専門家として認定された医師等(臨床遺伝専門医等)が関与すべきである。
2. 不適切な遺伝子検査の実施によって消費者が不利益を受けないように、学会員および関係者は、関連する科学者コミュニティと連携を図り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の最新の進行状況についての情報を得るとともに、遺伝子解析の意義、有用性、およびその限界に関する科学的な検証を継続的に行うべきである。
3. 学会員および関係者は、あらゆる機会を通じて、一般市民、学校教育関係者、マスメディアに対し、ヒトゲノム解析研究の成果や遺伝子検査がもたらす意味について、積極的に教育・啓発活動を行ない、遺伝子検査に関する一般市民の理解が促進されるように努力すべきである。
海外では、遺伝子検査の質的な保証や提供体制について、規制法の立法や、公的機関による継続的な監督、専門家を中心とした第三者検証組織の設立、一般市民を交えた議論の場を設けるなどの取組みがされていることにふれ、「わが国においても、遺伝子検査を監視・監督する体制の確立を早急に検討すべき」としている。